生活綴られ方練習

亀と象

東京からの帰り道、どうせ通り道だからと立ち寄った三鷹市美術ギャラリー『HAIBARA Art & Design 和紙がおりなす日本の美』がとても良くて得した気分になる。日本橋に店舗を構える1806年創業の高級和紙補「榛原」の、主に明治から昭和初期にかけて製作された木版摺りによる絵短冊や団扇、ぽち袋などが展示されていた。これら装飾を施した紙製品のことを小間紙と呼ぶそうだが、特に三代目当主の榛原直次郎は美術への関心が高かったそうで、竹久夢二や河鍋暁斎ら当代きっての作家らが数多くの商品を手がけている。とりわけ印象に残ったのが川端玉章と柴田是真で、ともすると大作の絵画や漆芸よりも、ちんまりとした小間紙での仕事の方が好きかもしれない。完全に偏見だけれども、岡倉天心に招かれて東京美術学校で教鞭を執る玉章のエリートらしさも、職人気質で偏屈奇矯な是真の超絶技巧もここではなりを潜め、自由闊達、軽妙洒脱な品々で、そのデザイン性の高さにびっくりする。実にシャレのめしてます。

起きぬけで行った展覧会だったからまだアルコールが抜けていなかったというのもあるかもしれないけど、とても楽しく観て回れて非常に満足。是真の団扇絵「酔後の亀」などは、自分の身丈ほどもある盃を前にひっくり返った亀が描かれていて、是真の幼名が亀太郎であることを思えば、存外この亀は是真自身のことなのかもしれないなんて考えたりしながら。暁斎の娘、河鍋暁翠の作品も少しだけだけれども観られて嬉しい。普賢菩薩が遊女に化身した「江口の君」という僕の好きな画題は多くの画家が描いているところですが、遊女=菩薩が乗る白象の表情なんかは暁翠の描くものがいっとう好もしいのです。

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