西へ。
兵庫県豊岡市、城崎温泉の城崎国際アートセンターで、上田久美子+miu『呼吸にまつわるトレーニングプールvol.1 オフィーリアの川』 の「実験室オープンデイ」とやらに参加する。2022年に宝塚歌劇団を退団し、フランス留学を経た劇作家・演出家の上田久美子さんによる「実験」の経過観察といった具合。視覚優位の「人間」的な認識を離れて、自分とは異なる他者になるには、というようなことが試みられている。宝塚時代には雪組『星逢一夜』や花組『金色の砂漠』などの傑作を次々と生み出してきたウエクミ先生。公式サイトによると「エンタテイメントの世界と、現代演劇などの『難しそうな』世界が分断していることを残念に思って」いるとのことで、それらの融合を一つの課題としているようです。0796。
鳥取県鳥取市、鳥取県立博物館で開催されていた『アートって、なに?―ミュージアムで過ごす、みる・しる・あそぶの夏やすみ』の関連企画、藤本由紀夫さんのギャラリートーク。「アートにおける音」がテーマで、元々は電子音楽などを学んでいたという藤本さんの「音」に対する鋭さが面白い。NHKの名物番組『ピタゴラスイッチ』の元ネタとして知られるペーター・フィッシュリ&ダヴィッド・ヴァイスの映像作品『事の次第』が、音の作品だという主張に目からウロコ。何かと「ほぼ最後の県立美術館」と煽られている鳥取県立美術館が倉吉市に2025年春に開館するので、県立博物館での美術展としては最後のものになるようだ。0857。
大阪府大阪市、住之江区の北加賀屋はBlack Chamberにて、詩人・小野十三郎に取材したパフォーマンス公演『歌と逆に。歌に。』を。「作曲:日野浩志郎/詩・構成:池田昇太郎」とクレジットされている池田昇太郎さんは、松本移住者でもある山本製菓の人。戦前から戦後にかけて大阪の、特に重工業地帯に向き合って詩作を続けたというこの詩人については、ほとんど何も知らない。それでも、そもそも会場のBlack Chamberも造船所の跡地なわけで、「アートのまち」として変貌を遂げつつある北加賀屋の歴史を思うと、当地の風景を詩に読み込んだ小野十三郎という存在は興味深い。06。
兵庫県西宮市、東京で行きそびれた『イタリア・ボローニャ国際絵本原画展』を見に西宮市立大谷記念美術館へ向かう。とはいえ、一番のお目当ては藤本由紀夫さんが同館で1997年から2006年まで毎年、年に1回だけ開催していた個展『美術館の遠足』の記録資料だったりする。学生時代に藤本さんを知ったのが2006年だったからギリギリ間に合わず、今や伝説的な展覧会を一度も観られなかったことが悔しい。絵本原画展の方では、認知機能の低下したお婆さんが我が家にやってくる人々なんかも誰が誰だか分からなくなってしまう、そのお婆さんからの視点で描いたものが面白く感じられたのだけれど、出品リストを今眺めていても、それがどの作品か皆目検討がつかない。幻だったかもしれない。0798。
このところ『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』(ガイ・ドイッチャー、椋田直子訳、2022年、早川書房)を読んでいたせいで、色々な作品を観ていても、認知によって形作られた言語に与えられる枠組みのなかで思考が展開されるのか、思考が要請する言語の習慣によって認知の能力も規定されるのか、まあ両方なのだろうけど、その度合のバランスみたいなことを考えていて、僕らは普段何を見ないように聞かないように考えないようにすることで、どのような思考形式を育んできたのだろうと思う。