久しぶりの北海道は、道央だけでなく道東にも足を延ばす。あの途方もなく大きな北海道を、地域によって区分する方法はいくらかあるが、札幌を中心に小樽や日高まで含む「道央」、函館のある渡島半島とその周辺を指す「道南」、北は最北端の稚内から南は旭川や富良野までを範疇にする「道北」、そして東側に位置し全道の4割もの面積に及ぶ広大な「道東」に分ける4区分は、単純さもあって道民にとってもわりと一般的なようです。
今回の一番の目的は、網走郡の津別町にあるシゲチャンランド。グラフィックデザイナーで造形作家の大西重成さんが、牧場だった場所を改修して作品を展示する大規模施設にしたものと説明すればよいのだろうか。グラフィックデザイナーとしては、ハービー・ハンコックや坂本龍一のレコードジャケットを手掛けたりもしていた実力派の大西さんによる独特の世界が広がるテーマパークといった感じで、公式サイトの写真などで見ると何というのか奇抜さが全面に出ていてともすれば稚拙な印象を受けもするのだけれど、実際に訪れてみると、その空間をグラフィカルに構成していくセンスに唸らされてしまう。アクセスも悪い上に夏場にしか開いていないので、簡単には薦められませんが、個人的にはとても充実した体験でした。保存研究する価値のあるものだと思われますが、もうどこかの学芸員が付いていたりするのかしら。大西さん自身が拾い集めたヒシの実などを素材にした小品を一つ購入。
一晩を過ごした釧路では、『鴨居玲 生と死を見つめて』(北海道立釧路芸術館)などを観たのち、何年も前に訪れた折、その何とも言えない淋しさが心に残ってしまったスナック「ラ・プラージュ」を再訪する。マスターがお元気そうで、相変わらずお客さんはほとんどいなかったけど、元アルバイトの若い男性がマスターに顔を見せに来たりしていて和やかな気持ちになる。
釧路からシゲチャンランドへ向かう道では、車に轢かれたらしい大きな猛禽類の死骸が、まだ生きていた頃のかたちを留めたままアスファルトに落ちていた。神々しいまでに立派な角をつけた鹿は、すぐ脇を走り去る車のことなど意に介さないようにして、何かをまっすぐに見つめていた。