先週末は『まつもと古市』という蚤の市へ。普段は街なかで開催されているようだが、この日は信州スカイパークという空港の近くの公園で。公園とはいうものの、正式名称は「長野県松本平広域公園」というそうで、松本市と塩尻市にまたがる140ヘクタール以上の敷地がある。大きい。公園というよりはエリアだ。同日に松本パルコでは『Room 390』というイベントがあって、そちらにも少し顔を出す。2つのイベントをハシゴして、この街にも随分と顔馴染みが増えたなとしみじみ思う。
京都へ向かうために乗っていた特急しなのが遅れに遅れている。遅延や運休、二転三転するアナウンスにも少し慣れてきたが、案内が基本的に日本語のみで外国人や耳の不自由な人にとっては難儀だろう。そんなことを考えていたら隣の席に外国人らしき人が座る。停車駅を知りたがっている様子だったので、たどたどしい日本語英語混じりの会話を交わす。ミュンヘン出身だそうで、何年も前にミュンヘン大学へ留学していた友人を訪ねて行ったことがあるなんて話を「ヴァイセローゼ」とかありったけのミュンヘン知識とともに。東京の大学で教鞭を執っているという彼女の専門を訊くと、どうやら表紙に写っている中世の写本を見せようとしたらしく大荷物の鞄から取り出した本がイヴァン・イリイチの"In the Vineyard of the Text"で、思わず「え、イリイチ!『テクストのぶどう畑で』じゃん」と大きな声を出してしまった。どうやら古い時代に人の手によって書かれたものが研究対象らしい。東京の前にはフィエーゾレにいたそうで、そこにも親近感が湧く。日本では何をしているのかと尋ねたら「サンガク」との答え。信州で会ったこともあり一瞬「山岳」が頭をよぎるが、専門と繋がらないし「まさか算額?」と確認するとその通りだそうで。江戸時代、和算の解法などを絵馬や額に書いて寺や神社に奉納したという算額を研究しているジャーマニーがいるとは思わずびっくりした。ネットの海は広大だというけれど、山あいを縫うように走る鉄道の中でその一端に触れる世界も広いものです。算額の先生も、たまたま電車で隣になった小僧(たぶん学生くらいに思われていた)がイリイチも算額も知っていることに驚いている様子でした。奉納された算額の写真を撮らせてもらうために、日本各地の寺社仏閣を巡っているとのことで、その日も約束があるのに電車が遅れていて時間に間に合わないから連絡しないといけないけど日本語での電話は自信がないと言うので、代わりに住職に電話をしてあげる。僕の取り出したポケベルサイズのスマホを見て、目を見開いた彼女の取り出したスマホもほぼ同じサイズで、2人してめちゃくちゃ笑う。彼女はちっさなスマホ2台を並べて、おっきなデジカメで撮影していた。
特急が遅れて大変だったけれど、おかげで愉快な旅路でした。