年が明けてからはのんびり松本で過ごす日々。三が日も3日に信州が誇るスーパーマーケットのTSURUYAに行ったくらいで、そこで行きつけのタイ料理屋のお母さんにばったり会ったのが唯一イベントらしいイベントかもしれない。とりあえず本屋には行く。
特に新年だからというわけでもないが、雑誌『暮しの手帖』を購入する。2020年のリニューアル号では「丁寧な暮らしではなくても」というフレーズで話題を呼んだ同誌だが、生活が苦手な僕にとっては、『暮しの手帖』を買うだけで何やらより良い生活を送っているような気になるものだから、時おり思い出してはアリバイ工作みたいにして購読している。そんな買い方だから同じ号が複数あったりして少し困る。いわゆる「ダブり」というやつ。今号では、三浦哲哉さんの連載「映画のアン/ラーニング」で、ナンニ・モレッティ監督の2023年の作品『チネチッタで会いましょう』が取り上げられているのも嬉しい。三浦哲哉さんという人は映画批評家ながら、料理に関する話も面白く、料理本批評とも呼ぶべき『食べたくなる本』(2019年、みすず書房)が極めて秀逸。
2024年5月に『hontoアプリ』のサービスが終了してから不便をしていたが、先月ようやく『丸善ジュンク堂書店アプリ』がローンチされた。『hontoアプリ』の頃は「ほしい本」に登録していた書籍を提携書店で購入すると「My本棚」に自動で移動されるので、ダブりを未然に防ぐことができていたので、新サービスの提供を心待ちにしていたのだけれど、新しいアプリでは「My本棚」のようなサービスがないようだ。提携書店で買った本だけがMy本棚のすべてなわけはあるまいし、自分の蔵書リストがオンライン上で保管されているというのも気持ちの良い話ではないので、それはそれで良いのだけれどダブりをどのようにして避けようか。こんなところでもアプリに依存していたことに気づく。
今回ほかに購入したものは『世界を翔ける翼』(スコット・ワイデンソール、樋口広芳監訳、岩崎晋也訳、2023年、化学同人)と『通訳者と戦争犯罪』(武田珂代子、2023年、みすず書房)など昨年出版のものを。前者は、GPS装置をはじめとする技術進歩によって、これまでほとんど実態の分かっていなかった渡り鳥たちの生態について書かれた科学ノンフィクション。渡りの間は脳を半分ずつ交代で眠らせるだとか、いわゆる「量子もつれ」を利用して方角を知覚しているだとか、にわかには信じられない渡り鳥たちが活写されている。後者は、中立性や守秘義務など、通訳者の職務としての規範性について、戦時のような状況にあってその正当性や倫理観をどのように考えるかというような難しい内容。実際に通訳者に対して有罪判決の出た、アジア太平洋戦争後の英国による裁判を参照しているらしい。
まだ読んでいない本についてあれこれ書くのも変な話だけれど、買った本についてこうやって少しでも書き残しておけば、ダブりは避けられるかもしれないとぼんやりと思う。今年は買った本について、ここで書くようにしても良いかもしれない。読んでどう思ったかも大事だけど、なぜこのタイミングで買おうと思ったかというのも読書の一つの要素に違いないのだから。