今週は松本で花見をしたり、木曜日には満月も出たので月を見たりと、あいも変わらず引きも切らず呑み続ける日々でしたが、4月最初の満月の次の日曜日といいますとキリスト教ではイースターということになりますね。ウサギと卵のお祭りですが、だからということもまったくなく何とはなしにピーター・ラビットの生みの親ビアトリクス・ポターの伝記映画『ミス・ポター』を観たりなんかしていました。彼女自身の作品よろしく、日々の生活の慎ましさをおろそかにしないささやかな良品という感じでしょうか。いかにも映画的なドラマティックな展開は、ここではあまり望むべきではないものなのかもしれません。ピーターはじめアヒルのジマイマなど、彼女の物語の登場人物(動物?)の、CGを用いた表現がとてもチャーミングでした。
さるにてもイースター、イエス・キリストの復活祭として説明される祭日ですが、イースターという名前はゲルマン神話における春の女神に由来するのだとか。なればこそ、フランス語では「Pâques(パック)」、イタリア語では「パスクア(Pasqua)」、ロシア語では「Пасха(パスハ)」と他のキリスト教圏では、英語のイースターとは似ても似つかぬ語形でして、これらはパスカルさんなどの人名にもなっていますね。ミュージシャンならパスカル・ピニョン、ショコラティエならパスカル・カフェなど。このパスカルさん系列の語彙は、じゃあどこから生まれてきたのかというと、ユダヤの出エジプトを記念したお祭り「過ぎ越し祭=ペサハ」が出自だったりするというので、なお面白いです。キリスト教オリジナルは一体どこに。基督教における最重要の「復活」というコンセプトだけが、土着の行事に入り込んだ例といっていいのかもしれません。
いずれにせよ、春まっさかりというような、かの神の子でなくとも新たな年の復活を祝いたくなる季節でありますが、東洋の暦でいいますと日付変わって10日が「鴻雁北(こうがんかえる)」という七十二候。「鴻」にしろ「雁」にしろ英語でいうならgooseといったところで、ジマイマさんのようなduckよりも大きな渡り鳥が、日本よりもっと涼しいところへと帰るシーズンなんでしょうね。gooseたちが、それこそ雁首揃えてお空を渡っていく景色なども今はあまり見ることもなく、鳥類の肉に似せたという「雁擬き(がんもどき)」の方がよっぽど身近だったりする貧しい世代ではありますが、関西でがんもどきのことを「飛竜頭」と書いて「ひりゅうず」や「ひろうす」と呼んだりするのはポルトガルのお菓子「Filhós(フィリョス)」から来ているなんて話もあって、言葉というものの意外なほど適当で興味深いところだったりします。