2月1日の便で羽田からフィレンツェへ。これから1ヶ月ほどイタリアに滞在することになる。
1日。深夜1時発の飛行機で出発する。シャルル・ド・ゴール空港で数時間のトランジットを経て、昼下がりにフィレンツェ=ペレトラ空港に到着。フィレンツェ=ペレトラ空港は、フィレンツェ生まれの探検家にちなんでアメリゴ・ヴェスプッチ空港とも呼ぶらしい。つまりシャルル・ド・ゴールからアメリゴ・ヴェスプッチへ飛んだことになる。この街のドゥオモであるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂の大きさに圧倒されながらしばらく街を散歩する。ルネサンスの偉人がその辺にごろごろ転がっていて、いまいち実感が伴わない。夕食はチョンピ広場近くのトラットリアMaga Magòで。「魔法使い」の女性名詞と男性名詞が並んだ店名が楽しい。
2日。朝はサンタンブロージョ(Sant'Ambrogio)の市場や、ダンテの像が見下ろすサンタ・クローチェ広場をぶらつく。フィレンツェは小さな街だから徒歩でどこへでも行けるのが心地よい。映画館のオデオンを書店ジュンティがリノベーションした「シネマ・ジュンティ・オデオン」は、フィリッポ・ブルネレスキ設計(異説あり)の宮殿の一部だったものが20世紀になり劇場として再計画された建物を使用している。3階席まで吹き抜けた劇場部分の1階が書店になっていて、2階席と3階席は無料で自由に使えるので、ここでしばらく仕事をする。前面の巨大スクリーンでは映画が常に上映されていて、この日はウェス・アンダーソン『ダージリン急行』が流れていた。街の南側に横たわるアルノ川に架かるヴェッキオ橋を渡るとピッティ宮殿が見えてくる。やはりブルネレスキ設計のサント・スピリト聖堂などを見学しながら散歩。橋の上から眺めるアルノ川の夕景が美しい。朝にサンタンブロージョ市場のステファノさんの店で買ったパルミジャーノが美味しい。サンタンブロージョこと聖アンブロジウスは、アウグスティヌスによると、古代の人間で最初に声を出さない読書を行った人物らしい。
3日。朝の電車でボローニャへ向かう。フィレンツェのあるトスカーナ州の北側で隣接しているエミリア・ロマーニャ州の州都だ。交通の要衝であり、ヨーロッパでも最古の部類に入る大学を擁する「La Dotta(学問の街)」であるためもあってか、実際の規模よりも都会的で洗練された印象を受ける。アントネッラ・アンニョリさんが計画に関わった図書館、念願だったサラ・ボルサを見学した後、タイミング良く開催されていた「ART CITY Bologna」というイベントの展示をいくつか見て回る。国立のピナコテカにも行くのだけど、厖大過ぎて絵画というものが分からなくなってしまう。一日の締めくくりにVa Mo Láという活気のあるリストランテで夕食をとる。「Cibo per il corpo, bicchieri per lo spirito, libri per l'anima」というお店のコピーも気に入りました。食事は体のため、酒杯は心のため、読書は魂のため、といったところか。特筆すべきは、ボローニャ料理の「バランゾーニ」。ほうれん草を練り込んだパスタにリコッタチーズなどを詰めたものが一般的なようだが、Va Mo Láでは砕いたピスタチオをまぶしたパルミジャーノのクリームソースがかけられており、すこぶる美味しい。名前の由来となっているのはコメディア・デラルテにも登場するバランゾーネで、「La Dotta」ボローニャを象徴する真面目な医者というキャラクターだそうだ。この街は、もう一つ「La Grassa」というあだ名でも呼ばれていて、直訳するなら「肥満の街」で、美食の街でもあるということに納得した次第。