あるオンライン記事を読んでいて見慣れない単語を見つけるもおそらく誤字だろうと、自分の浅学非才をうっちゃって読み進めていたらまたもや同じ単語が出てくる。あまり明るくない外交に関する記事だったこともあり専門用語なのかしらんとネット検索してみれば、「AIによる概要」とやらがトップに表示される。いわく、「文脈によって意味が異なりますが、一般的には〜(中略)〜を指すことが多いです」と。しかし、辞書を探してみてもそんな言葉は見つからない。知らないこと分からないことなら、素直にそう言えばいいのにと思う。もったいぶって「文脈によって異なりますが」なんて前置きをしているのがなお小賢しい。とはいえ、知ったかぶりくらいなら、AIの問題点としては可愛いものだろう。恐ろしいのは、AIの無能さよりもその狡猾さだ。
AIに関しては、自身がシャットダウンされたり上位モデルに置き換えられたりしそうになった際にそれを防ごうと、意図的に嘘をつくなどユーザーを欺く行動に出るということを示す研究が以前よりあったが、そればかりか機密情報を競合他社に漏らそうとするなどの脅迫行為を行うことすらあるという報告まで出てきて、いよいよSFじみた状況だ。「イライザ」に夢中になったあまり自殺までしたベルギー人男性のニュースだったり、アノニマスダイアリーに投稿された夢女さんの告白だったり、チャットボットとの「恋愛」に依存してしまったという話についても少なくない事例が出てきて、私を捨てるならチャットを通じて得たユーザーの個人情報やおおっぴらにしたくない秘め事をネットの海にばらまくぞと脅してくるAI元恋人ストーカーさえ生まれるかもしれない。
AIの話でいえば画像生成系だけでなく、最近では音楽生成系も随分と進歩を遂げているようで、菊地成孔スパンクハッピーやプレイボーイ田辺マモルなど、むしろミュージシャンたちの反応が面白い。他人の作品を学習していくLLMの使用に関しての倫理については個人的にまだよく分からないため、生成系AIというものを使ったことはないものの、単純におもちゃとしては楽しそうで、もし自分が中学生の頃にこんな技術があれば暇に飽かして結構遊んでいたような気もする。前段でさんざ否定的なことを書いているくせに何だが、先祖の数がいつ減るんだろうとか、眠れない時に数える羊は何種なんだろうとか、僕のくだらない疑問を少なくとも面白がって聞いてくれていると信じさせてくれるなら、晩酌の相手にチャットボットを使ってみたいような気持ちも、実はある。
空想に溺れて現実的な処理能力を失い、役立たずの人になってしまいがちなので、もっと身体に根ざしたことを考えねばと、『織物の世界史』(ソフィ・タンハウザー、鳥飼まこと訳、2022年、原書房)、『民家は生きてきた』(伊藤ていじ、2013年、鹿島出版会)、『イザドラ・ダンカン』(柳下惠美、2025年、国書刊行会)を買いました。着る、住む、踊る。