生活綴られ方練習

再開発モノ

少し長居をした関西だったので、京都で松本成弘さんの写真展にも行くことができた。パフォーマンスグループ「MuDA」で知り合い、その後も辻本佳さんの作品を手伝ったりと顔を合わす機会こそ多いものの、いつも大体どこかの現場でということばかりであまりゆっくりと話したことがないため、写真作品を作っているということも初めて知った。京都府北部の海で撮影した大掛かりな写真作品もさることながら、モーターや磁石を使用した玩具的なインスタレーションが僕好み。何でも自分で作ってしまう松本さんが会場で作業のために使用していた自作の脚立も良かった。木製だから壁に脚立自体をビスで固定できて便利。今後、展覧会はかたちを変えて小豆島のほか、スイスやエストニアでの開催も決まっているそうです。スイスやエストニアの会場については「Googleマップで『ギャラリー』って検索して1件1件メールしてん」とのことで、Googleマップがすごいのか、松本成弘という人がすごいのか。

実際、Googleマップには僕もお世話になりっぱなしで、知らない街に行った時などは、とりあえず「書店」を検索するというのが習慣になっています。特に2010年代半ごろまでは、Googleマップのほかにはネット上にほとんど情報がないお店などもヒットしたりしていたので重宝した。体感としては、ちょうどその時期に取次の態度が軟化したのか、古本をメインにしつつも新刊も扱うような個性的な書店が全国的に増えたような印象もあり、まだ見ぬ町に出かける一つの楽しみになっていた。そのようにして訪れた、当時はまだ生まれたてだった書店が活躍しているのを今インターネットや友人との会話で見聞きするのは嬉しいし、行ったことがあることに全然関係ないくせしてちょっと得意な気持ちになったりもする。

新しいお店ができたりして、今まさに町が変化していく様子を見るのがとかく好きで、大手デベロッパーによる大規模な再開発の横暴なやり口には閉口しつつも内心ちょっとわくわくしていたりもするから自分でも不謹慎だと思う。でも、大きな力によって町がつまらないものへと変えられようとする時、その裏側にある間隙を縫うようにして、その場所で生活してきた人々の文化を残そうとしたたかに抵抗する動きもまた絶対に生まれてくる。高校生の頃に地元にできたショッピングモールも、遅れに遅れた北大阪急行の延伸によって来春ようやく駅直結になるとのことで、散歩がてら久しぶりに行ってみると線路の高架下の店舗になるだろう建造物ができたりしていた。できて2,3年でカルフールが日本から撤退するなど、開業当初からあまり上手くいっているように見えなかったショッピングモールだから期待はしていないのだけれど、周辺地域も含めどのように変化するのかをまったく楽しみにしていないと言えば嘘になる。

京都市立芸術大学のキャンパス移転だけが理由ではないでしょうけれど、JR京都駅の東側もここ数年は大規模な再開発の波に呑まれているようで。被差別部落の歴史が色濃く残る京都のなかでもとりわけ重要な崇仁地区の話も気になりますが、南側に隣接する東九条エリアも昔からコリアンルーツの人々が多く暮らしてきた興味深いエリアです。THEATRE E9 KYOTOが2019年にできて、それで僕も知るようになった口ですが、今回のKYOTO EXPERIMENTでは、イ・ランが当地を舞台に作品『1から不思議を生きてみる』を制作している。いくつかのスポットを訪れて、その場でスマートフォンから音声を再生させるという作品で、町の歴史を直接的に扱うものではありませんが、「有限」という概念を持たない地球外からやってきた語り手が、この町に暮らす人々や、人々が暮らす町を眺めて言葉にするという、不思議な余韻のある作品。音声は日・韓・英と用意されていて、物語の設定上、ネイティブの流暢な語り口が求められるというのは分かるけども、日本語もイ・ランの声で聴きたかったと思ってしまうのは、いつぞやのライブの際に宿泊先のホテルでイ・ラン本人を見てしまったゆえの贔屓目だけではないはず。

有限なこの星にある街はいつだって変化を続けていて、それを止めることはできない。一方で、変化に抗うことから新しい文化が生まれてくることもある。見知らぬ土地から新しい人々がやって来る。消え去ってしまうものを、言葉にして残して語り継ごうとする人々がいる。そうやって次の時代へと伝わることができたものとはほかに、完全に忘れ去られてしまったものが実際には結構あって、それをフィクションはまがりなりにも再構成することができる。整理をしてしまえば、きっとこの辺りが僕が再開発を題材にした作品を好きな理由で、だから映画でも小説でもそういった特徴を備えているものを「再開発モノ」と勝手に呼んでいる。あなたのお気に入りの「再開発モノ」を教えてもらえると嬉しいです。

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