2月は基本的にイタリアのフィレンツェに滞在していますが、今回はスイスも訪れています。サン・ミニアート・アル・モンテの経験に味をしめて、ミラノのドゥオモ、ロカルノのマドンナ・デル・サッソと高いところに上っています。
14日。昼過ぎにサンタンブロージョ市場に行ってランプレドットを食べる。パニーニに挟んでいないランプレドットは初めて食べる。ここのランプレドットは脂も透き通っていてとても美味しい。午前中に仕事、お昼を市場でランプレドット、また仕事して夕方に少し観光というサイクルはフィレンツェ生活として程よいかもしれない。夜はアパートのシェアメイトみんなでピッツェリアに行く。賑やかな通りのビッレリア(ビール屋)で一杯ひっかけてから帰路につくと路上で本を売っている人がいる。一緒にいたホームレスの人の持ち物だったというウンベルト・エーコを購入。
15日。ミラノに移動。ロンバルディア州の州都であるミラノは、ランゴバルド族の土地という名前の通り、そんなこともないのだろうけど街を行く人々が少しゲルマンらしさを漂わせている気がする。単純にミラノが大都会だからというだけかもしれない。テレビアニメ『世界名作劇場』シリーズの『ロミオの青い空』(原作はドイツの作家リザ・テツナーの『黒い兄弟』)にも登場した大聖堂(ドゥオモ)がとてつもなく素晴らしくって言葉を失う。階段で屋上に上がって夕日に染め上げられる霧のミラノをいつまでも見ていた。
16日。ホストが大変な読書家らしく、本がたくさんあるAirbnbを後にし、一路スイスへ向かう。ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語と4つの公用語を設定しているスイスで唯一、イタリア語のみを公用語にしているティチーノ州だからイタリア国内旅行の気分でいたら街の雰囲気も人の雰囲気も随分と違う。ちなみに公用語が4つあるということは、正式な国名の表記も4つあるということで、本来ならばそれらをすべて併記しないといけないのだけど、切手や紙幣など紙幅に限りがあるものについては略称として「CH」、つまり「Confoederatio Helvetica」というラテン語の単独表記が許されている。
17日。「フニコラーレ(=ケーブルカー)」でマドンナ・デル・サッソ教会に登る。子供の頃、バージニア・リー・バートンの絵本『ちいさいケーブルカーのメーベル』が好きだったから、ケーブルカーに乗るのはいつになっても楽しい。高いところから眺めるマッジョーレ湖もまたとても綺麗。麓に戻ってきて、ロカルノからバスに10分ほど揺られてアスコナ方面へ。ユングのエラノス会議の場所であり、多くの芸術家や思想家が訪問、滞在した地だ。モンテヴェリタ(真理の山)を訪れることもできて、長年の憑き物が落ちたような心地。オフシーズンだったため美術館などが軒並み閉まっていて、むしろ良かったと心から思う。
18日。マッジョーレ湖を離れるのが惜しいスイス最終日。朝は地元ティチーノ州のアーティストを中心に構成された展覧会を観て、それからはひたすらにマッジョーレ湖畔でのんびりと過ごす。ロカルノは物価が本当に高くってめげそうになるけれど、アスコナになら住んでみたい。特に何をしたというわけでもないのに、だからこそ、夕暮れにまかせて刻一刻と色を変える湖面、細い急斜面を下る先にふと姿を表す時計塔、まだ辛うじて雪を頂く山々に貼り付くようにして立ち並ぶ家の灯り、そういったものすべてが印象深く記憶に残る。空気はもうほとんど春の気配をまとっている。