松本での仕事の打ち合わせを信濃館という喫茶店でした後、打ち合わせのメンバーとともに枯淡苑へ行く。本とドライフラワーを扱うお店で、名前も素敵なものだから、松本に越してきたばかりの頃に何度か訪れ岡田史子の作品集やスワッグを買い求めたりするも、その後しばらく実店舗を閉めていたようだったので足が遠のいていた。今は週6営業に戻ったというので、また時々覗こうと思う。
書籍については「Digital Well-being」をテーマにしているとのことで、インターネットなどITに関する書籍が多い。技術の進歩が早い業界なので、古本を扱いながら良い書棚をつくることは難しいジャンルと思うけれども頑張ってほしい。同行者から「タイトルが気になるんだけど、この人(著者)は悪い人じゃない?」というような質問を受ける。参考文献の中に、好きじゃない批評家の本があったそうで。著者がどういう人なのかは気になるよね。似たようなタイトルで西垣通さんの『スローネット』(2010年、春秋社)という本があったので、「少し古いけれど、技術者出身だからインターネットについて雰囲気ではなく理解しているし文化的なことにも造詣の深い著者なので、こちらの方が良いかも」と自分は読んでもないくせに勧めてみる。ポール・ヴィリリオの「速度」などにも目配りしながら、情報化社会のなかでインターネットをゆっくりと使う可能性を探る本のようだ。
自分のためには、『コンピューターの宇宙誌: きらめく知的探求者たち』(紀田順一郎・荒俣宏編、1992年、ジャストシステム)と『恢復する家族』(大江健三郎、1995年、講談社)を。前者は、博覧強記のコンビが編集するもので、先の西垣先生のほか、梅棹忠夫、山根一眞、立花隆、林望、藤幡正樹などをゲストに迎えている。日魯漁業(現マルハニチロ)でプログラマをしていた荒俣先生については以前も少し触れたけど、国書刊行会『世界幻想文学大系』でも荒俣先生とコンビを組んでいた紀田先生もジャストシステムのかな漢字変換ソフトウェア「ATOK」の監修に携わっている。エンジニア夫婦が創業したジャストシステムも興味深い会社なので、いつかちゃんと調べてみたい。後者は、ノーベル賞作家の方のオーケン(失礼)が、幾度もモチーフにしてきた知的障害者として産まれた息子の光さんや家族について書いたエッセイ。幼い頃から人間の言葉よりも鳥のさえずりや音楽に関心を示していたという息子が、30年の月日を経てついに作曲家となるまでを描いているそうだ。装画を手掛けているのが母親というのも感動を誘う。じっくりとただ待ったり、ゆっくりと時間をかけたりしないとできないことというのは、どれだけ技術が進んでもきっとなくなりはしないだろうと思う。