生活綴られ方練習

左京区ならいそう

那覇からは神戸空港への便が安かったため、しばし関西に立ち寄る。『タイムアウト東京』で記事にさせてもらった京都建築映像祭』が開催中なので、上映会に合わせて京都にも行こうと調べてみたら、野村香子さんが出演する『なんでもOKなダンスパフォーマンス』がロームシアター京都で、『Ambient Kyoto』のコラボレーションイベント『Interference, Resonance: ACTIONS in AMBIENT KYOTO』が京都新聞ビルでやっているとのことだったので、これは好機とばかりに上洛した。

『京都建築映像祭(KAFF)』のプログラムディレクターを務める写真家の田村尚子さんには、フェリックス・ガタリも長年関わっていたフランスの伝説的な精神病院ラ・ボルド病院を取材した『ソローニュの森』(医学書院、2012年)という写真集があるのですが、ドキュメンタリーとはまったく異なる視線で病院内に流れる空気をそのまま写し取ったような作品群で、そこに写し出されているのはラ・ボルドの院長ジャン・ウリのいう「コレクティフ」の実践といえばいいのでしょうか。やはり医学書院のシリーズ「ケアをひらく」は面白い

僕が参加したのは『KAFF 2023』のメインコンテンツ、リトアニアの現代美術作家ダイニュス・リシュケーヴィチュスによる作品『The Moden Flat』の上映会。作家自身の暮らすフラットを舞台に、家族が営む日常的な生活と創作の風景が入り混じる実験的なドキュメンタリー作品だ。リトアニアというとジョージ・マチューナスやジョナス・メカスくらしか思い浮かばないが、そのメカスが「リトアニアとはチュルリョーニスのことだ」とまで書いている画家で作曲家のミカロユス・チュルリョーニスという国民的英雄について教えてもらった。1992年にセゾン美術館で展覧会が開催されたらしい。やはりセゾンカルチャーは面白い

ロームシアター京都で上演されていた『なんでもOKなダンスパフォーマンス』というのは、『CONNECT⇄_アートでうずうずつながる世界』というプロジェクトのプログラムだったようで、僕が参加した午前の回は参加者にダウン症の方が多く見られた。『CONNECT⇄』自体は4回目の開催だが『なんでもOKなダンスパフォーマンス』は初の試みで、進行などにまだこなれないところはありそうだったけれども、大人も子供も楽しそうに体を動かしたり声を出したりしていた。会場には、久しぶりに会う友人が子連れで来ていたりしていて、育児をしていると舞台公演などにもなかなか行きづらいだろうから、こういうイベントは長く続いて皆にとっての毎年恒例の行事になってほしい。

『Interference, Resonance: ACTIONS in AMBIENT KYOTO』では、原摩利彦さんと中山晃子さんのコラボレーションがとても良かった。デジタル色の強いラインナップのなかにあって、映像であろうが音響であろうがマチエールだけが持ち得る生々しさを強烈に感じる。このイベントのためだけに東京からやって来た知人の学芸員は、我らがClub Metroで開催されたアフターパーティーにも参加していて、翌日から海外出張だというのに夜中まで一人で踊っていて、限られたリソースを「現場」にベットするそういう態度は好ましい。

少し時間が余ったからと訪れた堀川五条の書店「hoka books」が、思いがけず今回の京都での一番の収穫だったかもしれない。大学のサークルの後輩2人がコロナ禍で始めたもので、以前から行ってみたいと思っていたもののなかなか機会がなかった。機会がなかったというのはひょっとすると言い訳で、最近よくある小さな独立系の書店が全国どこに行っても似たような品揃えばかりで、実際に行って失望してしまうことを恐れていたのかもしれない。結論からいうとまったくの杞憂で、想像以上に面白い店だったのでとても嬉しくなった。最近京都に引っ越したジョイスのイベントなどもやっていたというから世間は狭い。

世間は狭いというものの、毎度これだけコンテンツ山盛りの京都ながら、意外とお互いのことは知らなかったりするようで少しもったいないとも思う。この人はこのイベント興味ありそうだなと思うことはあっても、あまり誰かを誘ったり紹介したりするのが得意でないので、左京区のスチュアート・ブランドみたいな人が『Whole Kyoto Catalog』を作るのが待たれる。

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