おもちゃみたいなガジェットが好きだから、マグネットで貼り付けた場所によってころころと表情を変える音質も込みで気に入っていたMUZEN PETA Bluetooth スピーカーが、でもやっぱりおもちゃだからか、たった数回の充電でバッテリーがオシャカになってしまい購入した店舗まで交換に行く。その帰りに通りかかったMARKING RECORDSでは『ヤドカリ本読みデモ』が開催中で、目の合った本読みデモのメンバーに声をかけてもらったので、TSURUYAでの買い物帰りで納豆とかをバッグに入れたままなんだけど大丈夫かなと思いながら参加する。
デモというと「〇〇反対!」といった威勢のよいシュプレヒコールなどがやはり思い浮かぶし、それはそれで大事なんだろうけれど、カウンター精神には満ちつつも様々な人への思いやりについても考えていたいだろう本読みデモのメンバーが選んだスタイルが好ましい。本を読むという行為をデモンストレーションすることで、自分自身も含めすべての人々の知識不足というよりは無関心を惹起しようという、優しく静かでありながらも、しなやかでたくましいデモのあり方だと思う。デモンストレーションなしにデモクラシーはないと喝破していたのは柄谷行人御大だったろうか。
『ヤドカリ本読みデモ』は、本読みデモ側が用意している本でも自分で持ってきた本でも、参加者それぞれが自由に本を読む時間と、その後の対話の時間で構成されている。対話の時間には、その日に読んだ本の話でも昨今の情勢について感じていることでも、車座になって色々なことを話し合う。あまりこういう場が得意でない僕ですが、参加者の皆さんの切実な発言を聴いていて、直接的にそういう話があったわけでもないのだけれど、こういう活動を始めたばかりの人につきものの自分自身の加害性や矛盾に向かい合わざるを得なくなるがゆえの心労に思いが行く。そしてアリマタヤのヨセフのことを思い出す。
榎本空さんの本を本読みデモに寄贈しようと思い立って本屋へ。在庫のあった『母を失うこと――大西洋奴隷航路をたどる旅』(サイディヤ・ハートマン、2023年、晶文社)を購入する。伊江島に行った際に訳者の榎本空さんから頂戴してしまったので、いつかは自分でも買って誰か欲している人に贈ることができればと思っていたけれど、榎本さんご本人が「難しい本で」と話されていたように、文章や書かれている内容がというよりは、筆者をはじめとしたアメリカ大陸で生まれた黒人が母なる大地と憧れて訪うアフリカ大陸で出会う人たちの一部は、ある意味では奴隷貿易に積極的に加担してきた、もっというならば黒人をさらって白人に売りさばいていた黒人を先祖に持つという状況の難しさをどう考えればよいのだろう、そんな「難しい」内容の本を誰に薦めればいいのだろうと考えあぐねて、今まで棚上げしてきた。本読みデモに参加する誰か一人でも関心を持ってくれたらとても嬉しい。
ほかには、能登で起こった災害に関する仕事が入るかもしれなく、その予習になればと思い『能登半島記(未完)』(前口憲幸、2024年、時事通信出版局)、『能登のムラは死なない』(藤井満、2024年、農山漁村文化協会)、そして森崎和江の『能登早春紀行』(2025年、中公文庫)を。『能登半島記(未完)』は被災者でもある能登在住の新聞記者によるリアルタイムな記録、『能登のムラは死なない』は地震前から継続的に取材していたレポートで、震災や豪雨災害とばかり関連付けて語られることになってしまった能登という地域について、連綿と続いてきた暮らしのことから知る必要があるだろうと考えて、そういえば森崎和江先生にまさに能登の紀行文があったなと思って手にしたのが『能登早春紀行』。お勉強はやめられません。
あまりシリアスな本ばかり買っても気が滅入るので、かねてから欲しかった植物図鑑的なものを探す。今時期の松本を散歩していると、本当に色々な花が咲いていて目に鼻に楽しいのだけれど、そのことごとくを名前すら知らないことが悲しいと感じて何か便利な図鑑があればと思っていた。でも、図鑑なんて小学生以来あまりちゃんと読んだことがなくて、どういうものを選べば良いのか分からず、結局買ったのは『道草ワンダーランド』(多田多恵子、2023年、NHK出版)になった。花の名前の分かる人、一緒に散歩してください。
週末は『クラフトフェアまつもと』。関連する『工芸の五月』に仕事で関わったこともあり、人の多さにもめげず会場のあがたの森公園へ。1日目は本読みデモの面々にも会えて無事に本を渡す。雨が降ったり止んだりの天気のなかで、松本にも随分と顔なじみが増えたななんて考えながらピースフルな雰囲気。2日目は同じく人混みが苦手な友人とともに。道すがら東家でデリシャスウィートスが何かしらやっているのを見つけて立ち寄る。デリシャの話はまたする機会があると思うので割愛する。古本も売っていて、チャーマァーさんが魚柄仁之助レシピを愛用していると分かって、『幻の麺料理』を読んでいたばかりの僕は『食べ暮らしダイエット』(1999年、文藝春秋)迷わず購入するのでした。