生活綴られ方練習

平均律

京都市立芸術大学の芸術資源研究センター第49回アーカイブ研究会『《‘moon’score》の誕生―野村仁と美術・音楽の交差点―』とANTIBODIES COLLECTIVE A/PRAXIS『無冠のカーニバル』のために10日ぶりの京都へ。

前者は13時から17時までの長丁場で、渋い内容のイベントにもかかわらず、多くのお客さんが集まっていて、野村仁というアーティストの影響力の大きさが窺い知れる。「宇宙の法則が数に従う」というピタゴラスの話をよくしていたとか、たくさんのレコードコレクションの中にはバッハもあったとか、そういうエピソードを聞いていたのに、唐突に「この作品にも実は『平均律クラヴィーア』を使っています」と言われ、「そこピタゴラス音律にしないの!?」と思ってしまった。しかしながら、調べてみるとバッハの『平均律クラヴィーア曲集』は、いわゆる日本語でいうところの「平均律」ではないらしい。1オクターブをきっちり12等分にするから、隣り合う音の周波数の比が1:2の12乗根(1.059463……)と無理数になってしまう平均律に支配された音階なんて、無理数を発見した人間を処刑してしまったなんて逸話もあるピタゴラス教団の人が聞いたら卒倒するに違いない。ことほどさように、等分することには難しさがある。何はともあれ、山本アキヒサさんの恩師でもある野村さんのお人柄をほんの少しでも知ることができてよかった。アキヒサさんとの酒がますます進む。

「アンチボ」ことANTIBODIES COLLECTIVE A/PRAXISのパフォーマンスを観るのは、2024年夏のGASBON以来。仲の良いダンサーの辻本佳さんが参加しているひいき目を抜きにしても、見ごたえのある作品だった。基本的には同じことをしているはずなのに、GASBONで観たときよりもずっと良く感じたのはなぜだろう。視線の誘導の方法や導線が整理されていて見やすかったこともありそうだが、単純に夏の北杜市の工場跡地が暑過ぎたために僕の体調が良くなかったということも、全然ある。1日目のソワレを観たが、翌日にやっていた吉田寮での公開打ち上げ?のようなものにも参加する。会場にはなぜか松本在住の友人がいて、ほんの数日前に松本の飲み屋で会ったばかりだったからびっくり。吉田寮は面白いのです。佳さんとも久しぶりに話せて嬉しい。2月27日からは新作ソロ公演『』があるので、とても楽しみ。

京都では「」の姉妹店だという「」にも初めて行く。お酒にも使えるドリンクチケットを買ったのに、その場で使い果たしてしまった。hoka booksでは、以前立ち寄ったときに話した榎本空さんの『それで君の声はどこにあるんだ』(2022年、岩波書店)を読んでくれていて、いたく気に入ったらしくお店でも扱うようになっていた。榎本さんの回し者みたいになっていますが、こういうことから長く売れ続ける本が生まれてくれたら率直に嬉しい。SNSでバズらせて、初動を大きくしたいという気持ちも分からないわけではないのだけれど。

京都ばかりを褒めてしまっているけど、松本に帰ってきてからも楽しく過ごしている。色々の入稿前の仕事が落ち着き、夕方からのミーティングまではわりとのんびりできるなと思っていた日、友人から連絡が来てお茶をすることに。苦手だった数学を勉強し直したいという彼女が持ち歩いている中学数学の問題集を一緒に解く。「問題が解けると嬉しい。すっきりした!」と気持ち良さそうに話す彼女に、まったくの同意。彼女が解いている問題集のページを眺めながら、まさに"We're on the same page."という気持ちだった。分からなかったことが分かるようになったり、思いも寄らなかったことを知ったりすることは、ただただ快感だ。何でもない日のはずなのに、とても天気の良い日だったからか、街ではたくさん知り合いに出くわす。行き帰りの60分くらいの行程で6人、平均すると10分に1人くらいのペースだから笑ってしまう。平均するから可笑しいんだけどさ。

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